LIFE 人生の経営戦略
著者:山口周
「will to manage = 経営する意思」
企業経営は思い通りにはいきません。想定外のことが次々に起き、人々を束ねることも容易ではない中、それでもなお、成り行きに任せるのではなく、とにかく何とかするという主体的な意思を持って、目標の達成に向け人々に働きかけ、組織全体を率いていくという意思が経営者には求められる。
第0章 なぜいま人生の経営戦略なのか
Section titled “第0章 なぜいま人生の経営戦略なのか”問題意識1:難しい時代の到来
Section titled “問題意識1:難しい時代の到来”成長が脅迫的に求められる登山の社会から、安定した低成長の高原の社会へと成熟していくプロセスだとポジティブに捉えた方がいい。
ゼロ成長へと軟着陸しようとしているのに、制度や規範は高成長への離陸を目指す社会のままという、つなぎ目の社会に生きている。
エミール・ディルケームのアノミー、社会の混乱は、この歪みが原因で起きている。アノミーはつなぎ目の社会で起きる。
GDP の平均成長率は上と下でかなり差がある。つまり、ゼロ成長社会とは、成長発展している場所と停滞・衰退している場所との明暗が極端に分かれている社会のこと。そのため、個人の居場所についての選択、経営戦略論の用語でいうとポジショニングが人生に大きな影響を及ぼす。
問題意識2:準備のできていない人たち
Section titled “問題意識2:準備のできていない人たち”私たちは自分自身の人生というプロジェクトの唯一の責任者であり、リーダーです。そのような立場にある私たちが、自己のわがままに忠実になって発言し、離脱することによって、最終的には組織や社会にとってもより良い状態が生まれると考えるべきなのです。
社会の衰退は何よりも個人の活力の喪失によって起きるということを絶対に忘れてはなりません。
一人一人が自分で考え、自分で決めるという気概を失った場合に滅びる。
問題意識3:二極化する人生論・キャリア論
Section titled “問題意識3:二極化する人生論・キャリア論”マキャベリ的人生論は、残酷な社会ゲームを冷徹に戦って生き残り、経済的・社会的成功を手に入れろという考え方。
ルソー的人生論は、経済的・社会的成功の巨像にとらわれず、自分らしく生きて本当の豊かさを手に入れろという考え方。
結論としては、どちらもそのままではダメ。
マキャベリ的人生論の問題点はゴールの設定にある。キャリアに関するこれまでの研究の多くは、経済的成功や社会的成功が仮に実現できたとしても、それが必ずしも幸福な人生には直結しないということを明らかにしている。ゴール設定に失敗すればプロジェクトは必ず破綻する。
ルソー的人生論の問題点はプロセスの設計にある。確かに人生において自分らしさは重要な指標でしょう。しかし自分らしさという目標は一定の経済的社会的基盤があってこそ獲得できるものであり、それだけをナイーブに目指して得られるほど人生というプロジェクトは容易ではありません。戦略的実現性を欠いた目標は単なる夢想にすぎません。そういう意味でルソー的人生論は甘い。
プロジェクトのデザインでは、ゴールの設定とプロセスの設計の 2つが決定的に重要であり、これは人生というプロジェクトについても同様といえる。
どちらも取り入れて「アリストテレス的人生論」、つまり「自分らしいと思える人生を歩み、経済的・社会的にも安定した人生を送る」。
人生の目的をエウダイモニア(良き生)に置き、その実現のために極端を避けて中庸を重視せよと訴えた古代ギリシャの哲学者アリストテレスにならって「アリストテレス的人生論」と名付ける。
中庸とは儒教を起源として「極端に偏らず、また過不足なく調和がとれていること」を意味する。欧米でも古代ギリシャの哲学者アリストテレスが説いた徳論「メソーテス」や、現代でいう「Golden Mean」がそれに相当する。
具体的にいうと、勇気が過ぎれば無謀ととられ、足りなければ臆病に、親切が過ぎればお節介になるし、足りなければ無関心といった偏りを持たず何事も過不足のない状態が徳であるという教え。
「人」という存在は感情で動く生き物です。左脳と右脳、つまり論理的思考と感情的思考のバランス = 中庸が取れていなければ、成果を挙げてもそれを維持または拡大することは困難だといえる。
第1章 目標設定について
Section titled “第1章 目標設定について”01:パーパス:人生というゲームの基本原理を抑える
Section titled “01:パーパス:人生というゲームの基本原理を抑える”時間資本を適切に配分することで持続的なウェルビーイングの状態を築き上げ、いつ余命宣告をされても自分らしい良い人生だったと思えるような人生を送る。
- ポイント1:私たちがコントロールできる戦略変数は時間資本しかない
- ポイント2:時間資本をいかに配分するかが中心的な論点になる
- ポイント3:プロジェクトの目的は持続的なウェルビーイングの状態を築くことを目指す
戦略とは、詰まるところ資源配分のアートとサイエンスである。
時間資本 -> ウェルビーイング├ 人的資本(スキル、知識、経験)├ 社会資本(信用評判、ネットワーク、友人、家族関係)└ 金融資本(現金、株式、債券、不動産)重要なのは、社会資本は人的資本によって増えるということ。いわゆる異業種交流会の不毛というのもこれにあたる。
金融資本を生み出すのは、その人の持っている信用、評判、知名度などの社会資本であって、知識、能力、コンピテンシーなどの人的資本ではない。
資本には 2種類ある。仕事をする上で役立つ資本と、人生を豊かにしてくれる資本。
失敗者とは、お金を稼げなかった人や出世できなかった人ではありません。失敗者とは働きすぎてしまった人、仕事ばかりに時間を使って家族や友人との楽しい時間を過ごせなかった人のことなのです。
ウェルビーイングと 3つの資本の関係
Section titled “ウェルビーイングと 3つの資本の関係”自己効力感とは、自分に能力があり、何か意義のあることにそれを十分に生かすことで成長できているという実感、誰かの役に立つことで自分をまた高めているという実感を持っていること。
社会的つながりとは、職場や取引先から信頼・信用されているという実感、コミュニティ内の知人や友人や家族と友愛的・親和的な関係を築けているという実感を持っていること。
経済的安定性とは、経済的に安定しており、多少のことがあっても通常レベルの生活を維持していくのに不安がないという実感を持っていること。
第2章 長期計画について
Section titled “第2章 長期計画について”02:ライフサイクルカーブ:超長期のプロジェクトロジックを持つ
Section titled “02:ライフサイクルカーブ:超長期のプロジェクトロジックを持つ”企業や製品が導入期、成長期、成熟期、衰退期といった異なるステージを経るのと同じように、人生もまた異なるステージを遷移し、それぞれのステージで求められる思考・行動様式は変わってくる。
ステージは目安であり、早すぎる・遅すぎるはない。
経営において選択肢の縮小は最も避けるべき悪手ですが、これは人生の経営戦略の実践においても同様です。「何々すべし」「何々すべからず」といったことわざや訓言が数多ありますが、これらは呪いのようになって、私たちの人生から思考と行動の自由を奪うものが多いので注意が必要です。
自分の頭で考えて、誰がどう言おうと自分にとって合理的だと思える人生の全体像、マスタープランを描くことができれば、世に蔓延する戯れごとに惑わされることなく、自分の足で大地を踏みしめるようにして人生の戦略を実行していくことができるでしょう。
長期の合理が大事。短期的には非合理でも。
03:キャズム:兆しを捉え、時期尚早で動く
Section titled “03:キャズム:兆しを捉え、時期尚早で動く”経営戦略を議論する際には、よく What(何を)や How(どうやって)という論点に焦点が当てられがちですが、実は When(いつ)という論点は前者と同等、いやそれ以上に重要です。
キャズム(Chasm)とは、浸透プロセスの初期段階において、特にアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に、市場浸透率で 16% 前後のところに存在する溝のこと。ここを越えると市場が一気に拡大する。
システムの変化は時間と比例的に起きるわけではなく、この 2割の壁を超えると一気に変化が起きる。これは様々な領域において観測されることを念頭に置いておいてよい。
成長市場が爆発的に成長している期間は一瞬。時期尚早でなければ勝てない。
コア人材に着目して兆しを捉える。
04:適応戦略:想定外の出来事をチャンスとして取り込む
Section titled “04:適応戦略:想定外の出来事をチャンスとして取り込む”適応戦略とは、企業や組織が固定された戦略や計画に固執するのではなく、事業推進に伴って立ち現れてくる機会や脅威に適応するために柔軟に対応し、資源配分を調整することで目標を達成するという考え方です。
イノベーティブなプロダクトやサービスを生み出すことに成功したチームほど、計画段階にかける時間が少なく、実行段階にかける時間が長い傾向があることが判明している。
プロジェクトの実行過程全体に計画と修正を溶かし込んでいる。
計画と実行を内混ぜにした即興型チームの方が市場での成功率が高い。
私たちの人生は膨大な仮説の集合体としてまずはスタートし、その仮説を一つ一つ検証し、破棄・修正することでしか前に進んでいけないということなのです。であるとすれば、いかに早い段階で仮説を検証し、戦略を修正できるかが重要な論点となってくる。
第3章 職業選択について
Section titled “第3章 職業選択について”05:ポジショニング:5つの力に着目して居場所を決める
Section titled “05:ポジショニング:5つの力に着目して居場所を決める”ライフマネジメントにおける意思決定において真に問題となるのは、勇気でも度胸でもなく、自分の居場所について趨勢(すうせい)をどれだけ論理的に考え抜くかという思考の累積量です。
市場による価値は、能力や知識の水準ではなく需要と供給の関係によって決まります。
06:ポジショニング:多動して自分の居場所を見つける
Section titled “06:ポジショニング:多動して自分の居場所を見つける”07:CSV 競争戦略:社会的利益を生み出す企業が長期的に繁栄する
Section titled “07:CSV 競争戦略:社会的利益を生み出す企業が長期的に繁栄する”08:内発的動機づけ:頑張るは楽しむに勝てない
Section titled “08:内発的動機づけ:頑張るは楽しむに勝てない”09:リソースベースドビュー:強みではなく、真似できない特徴に着目する
Section titled “09:リソースベースドビュー:強みではなく、真似できない特徴に着目する”10:イニシアチブポートフォリオ:異質な仕事を組み合わせる
Section titled “10:イニシアチブポートフォリオ:異質な仕事を組み合わせる”第4章 選択と意思決定について
Section titled “第4章 選択と意思決定について”第5章 学習と成長について
Section titled “第5章 学習と成長について”他者から与えられた物差しを受け入れることは、そのまま他者の支配を受け入れることになる。長期的には、必ず物差しを作る側 = 支配者と、物差しを受け入れる側 = 非支配者という関係が精神の深いところで成立してしまう。
人生の良し悪しを図るための指標は、決して他者から与えられるべきではなく、自分自身が考える「自分にとってのウェルビーイングとは」という問いから生まれたものでなければならない。
ベンチマーキング。うまくいかない時は真似る。素直に好事例の通り行動してみる。
学習は意識を変えることで発動するのではなく、行動を変えることで発動する。